古楽の魅力
皆様は「古楽」という言葉をお聞きになったことはありますでしょうか?
一般に、16~18世紀の中世ルネッサンス、バロック時代の音楽、バッハ以前の音楽のことを広く”古楽”と呼んでいます。
古楽は、その佇まいがたとえて言うなら「古い建物」に似ています。洋の東西を問わず、古い建物には懐かしさと、モダン建築にはない優しさや人の温もりがあります。
無駄なく、間違いなく、早く、が要求されるデジタルな忙しい現代とは違って何をするにも不便で時間がかかった時代ならではの、人間らしいゆったりとした豊かな気持ちを取り戻せる空間。
古楽器の音は地味ですが陰影に富みふくよかです。ほの暗い灯りが辺りを和ませるように、ゆったりと音の深みを旅をし、いつの間にかこわばっていた気持ちがほどけていくような心地良さが味わえます。
古楽はいわゆるクラシック音楽の堅苦しさとは無縁の、古い建物が持っている懐かしさと優しさ、人のぬくもりを持っているのです。
*音の「断捨離」*
作曲家が目指した本来の姿は実は意外に「簡素」で「明快」だったのでは?と感じます。例えば、古楽では音を震わせる「ビブラート」を多用しません。澄んだ響きですっきりとして音楽が「ごてごてしていない」のです。
ほどよい音量は耳に優しく、まるでそばで語りかけてくるようで、はっきりとわかりやすいのです。
ビブラートに代表される「ごてごてした感じ」は言ってみれば時代の経過によってついてしまった「垢」。この垢をそぎ落とし、あたかも今生まれたばかりのように表現するのが私たちにとっての古楽演奏だと考えています。これは今風に言えば、音の「断捨離」かもしれません。
古楽には素朴な感動があります。400年前の音楽が現代の私たちの胸にすーっと収まってくる。心地よい感覚を感じて欲しい。時代を飛び越えて私たちに寄り添い、心のうちに語りかける音楽。生命力を持った音楽。それが古楽だと思います。
*バッハが生きていた頃に使われた楽器*
私たちアンサンブル30は作曲された当時、実際に使われていた楽器を復元したもの、また、その頃の演奏の習慣や音律(現在とは異なっていた)などもふまえて、作品の本来の美しさを再現することを目指しています。
2017年 アンサンブル30 安岡厚子